傷の治りに鍼灸を

  • 2018.06.14 Thursday
  • 00:40

週に一度、脳血管障害後遺症のケアで出張鍼灸施術に伺っているY様。

なぜかこの日はお体の触診をしている時から上肢の小指側が氣になっていました。

 

お体の反応を見ながら、麻痺側の上肢の動き改善の鍼灸施術を行っていましたら、

Y様より、そういえば5日ほど前に転倒しそうになり体を支えようとして麻痺側である左側の肘を壁ですりむいてしまったとのこと。2、3日してからズキズキと痛みが出てきたとのこと。

拝見すると擦りむいた皮膚の周囲が少し熱を帯びて腫れていました。

 

まずは擦過傷周囲の腫れのある箇所に台座灸。

そのあと、写真のように擦過傷を囲むように刺鍼。

 

しばらく置鍼し抜鍼したら、自覚的に痛みが軽くなり、他覚的には腫れと赤みが引いていました。

 

ご自身で自宅施灸を傷の周囲に継続してくださり、2日後にすっかり痛みは消滅しました、と患部の画像を送ってきてくださいました。

 

以前、研修を受けていた病院で、床ずれのため皮膚に大きな穴があき内部が見えている方への鍼施術のお手伝いをさせていただいたことがありました。1週間ほど毎日刺鍼を継続しただけで傷が目に見えてふさがっていきました。

この技法は、囲刺という傷跡の治癒を助ける方法です。

手術痕への施灸で、引き攣れ感が寛解した症例もあります。
外傷や古傷の違和感に鍼灸を併用することで、治癒が促進されて楽になってきます。
経絡の概念は入っていない対症療法的な施術です。
鍼による物理的な侵害刺激と灸による温熱刺激により、血流を促し傷の修復作業をする白血球の成分を患部に集約させる、という治効機序に基づくものです。

 

 

 

 

めぐるめぐるよ血流は。:井穴刺絡の講義

  • 2016.06.12 Sunday
  • 23:00
井穴刺絡今日は所属学会の基礎講習会での講義のお勤めをしてまいりました。

刺絡、という鍼法のもつ類稀なる有効性と、その鍼法の技術と知識を伝え継いでくださっている大先輩の先生方に感銘を受けてから約10年、講師陣の一隅に入れていただいてから6年ほどになります。そして東京でのお勤めは今日が最後です。ありがとうございました。
 
そして井穴刺絡の講義は今回で3度目。
受講される皆様にわかり易く、かつ臨床的な内容となれるよう、また前任の大先輩の先生のお伝えくださっていた内容に少しでも近づけるよう、と色々な思いが募りすぎて空回りしてしまっていたかもしれません。
 
血行動態が良好であること、これに勝る健康状態はないと言っても過言ではありません。
鍼灸、ことに刺絡鍼法は、疏滞しがちな末梢循環の血流を円滑にするのに優れた療法である、ということを証明するデータは多々あります。数千年前から脈々と受け継がれている古典の記述しかり、3μの内径の微小循環を可視化できる最新の科学技術による観察しかり、また井穴刺絡と脳血流量の基礎研究を共同で実施してくださっている医師の先生との研究結果しかり。

数千年も前にすでに体系的に記録されていた治効機序を、光学機械などを駆使した現代の最新科学技術が少しづつ証明しつつある。
科学の温故知新を実体験として感じることができる、そんな時代に臨床鍼灸師として居られることはとても幸せなことなのだなぁ、と今日の講義にむけた資料づくりをしながらじんわりと思いました。

この途轍もなく深淵で興味つきない世界を言語化してお伝えしていく、という大変チャレンジングで素晴らしい機会を与えてくださった先輩方に心からの御礼を申し上げます。

新天地ではまた新たに関わらせていただきたいと存じます。よろしくおねがいいたします。

そして、編集委員として学会誌を通してお伝えできることにも精進を続けてまいります。

深謝。

七人の女鍼灸師

  • 2016.05.25 Wednesday
  • 12:24
七人の女鍼灸師晴天満月の5月22日。
「七人の女鍼灸師」という東京鍼灸勉強会主催の講演会で、七人のうちの一人としてお話をするという機会を頂きました。
七人の女性鍼灸師が、それぞれ鍼灸学校卒業後どのように臨床の道を歩んできたのか、というお話と不妊治療に関するシンポジウムそして実技供覧というプログラムの会。
参加者は、鍼灸学校の学生さんだけでなく、現役鍼灸師さん、そしてお灸の大先生までをも含む満員御礼の講演会でした。

錚々たるお顔ぶれの壇上の先生方のお話を、自分がスピーカーであることをすっかり忘れて聞きいってしまいました!先生方の豊かなご経験、深い洞察と弛まぬ研鑽に触れ、大いに刺激を受けました。

講演を終え、女性鍼灸師だからこそお手伝いできることは本当にたくさんあるのだ、ということを時間を経て、じわじわと実感しています。
そしてひととのご縁の大切さ、精進を続けることで必ず道は拓かれる、ということ、また信頼を築くには丁寧に生きることが大切、というメッセージも頂きました。
七人の女鍼灸師と七本のcava
温和堂は今年、開業して5年、鍼灸師10年目を迎えるのだ、としみじみ。10年間走り続けてきた軌跡をお話することで、拙くはあれど一人の女鍼灸師の辿った道から反面教師でもよい、なにかヒントになるものを見出して頂くことがあらば嬉しい限りです。
いままで先輩の先生方から私が頂いてきた数え切れないご恩をわずかではありますが、お返しできたのではないか、とほんの少し肩の荷が下りた心地もしています。
大先生からの差し入れ。七本のスパークリングワイン!ありがとうございました!

講演会の先陣を切られたのは、外石(といし)晶子先生。目黒の鍼灸治療院セラキュアでチーフとして、不妊治療をはじめとする多様な疾患に対応されていらっしゃいます。女性の妊娠に関わる医学的専門知識をもとに全身のバランスを整える治療をされている様子をご紹介いただきました。外石先生は、コミュニケーションの大切さ、相手のこころに沿った対応をとることができる臨床家たることの大切さを強調されていらっしゃいました。初心忘るべからず。はい。

海老原美香先生は、アメリカの大学でスポーツトレーナーの学位を取得されてから、アロマやフラワーエッセンスの資格取得後、鍼灸学校で教員資格までとられた大変研究熱心な先生です。鍼灸学校での教鞭のほかに、有隣館日暮里鍼灸整骨院​久庵鍼灸マッサージ と往療、と臨床もしっかりと実践されていらっしゃいます。鍼灸師やアスレチックトレーナーの後進の実力の底上げに本気で取り組んでいらっしゃる頼もしい先生。世代交代が必要なときに若手が育っている、のは大事なことですよね!海老原先生、日本の未来のためによろしくお願いいたします!!
 
今回の講演会を企画された東京鍼灸勉強会の主宰のお一人でもある加藤且実先生は、温和堂の母校の鍼灸学校の大先輩で、多摩川駅の浅間神社ふもとにある、正和堂はりきゅう治療院の院長先生です。臨床歴今年で23年となる大ベテランの加藤先生。お話のなかで転機の際に出会われた大切なお言葉をご紹介いただき、人生を紡ぐのはひととのご縁だなぁ、と。天津中医薬大学第一附属医院直伝の中国鍼で数多くの難治の患者さんを治癒されてきた加藤先生の元気の源は臨床にあるのですね、とお会いする度に思います。そうそう、今回初めて、加藤先生の頼もしい二の腕はトライアスロン仕込みということを知りました。いつも後進の私たちに学びの場とご縁をありがとうございます!!

温和堂が、学校卒業後に受講した東京九鍼研究会で鍼先感覚の極意を教えて下さったのが、宇田川静香先生です。鍼先になにを感じるのか、それをどうするのか、宇田川先生に教えて頂いたことは温和堂の宝物として一生磨き続けてまいります。宇田川先生は東明堂石原鍼灸院で長年お勤めになられた後、現在はご郷里の福岡・筑紫野でおひさま鍼灸院の院長をされています。古代九鍼を駆使して様々な疾患の治療をされていらっしゃいます。おひさま鍼灸院で開催されている妊産婦さん向けの教室のお写真を拝見すると、画面には宇田川先生のお人柄と笑顔溢れるあたたかい空間が広がっていました。通院されている妊産婦さんのなかには、6人目をご出産された方も!産前産後のからだのケアを安心してお願いできる鍼灸院があるって素敵ですよね!

藤崎由起子先生は、鍼灸に関する学術論文を検証されたご経験をお話し下さいました。海外からの鍼灸関連の学術論文や臨床報告資料はいまやインターネットで容易にアクセスできるのですよね。
外苑前にある女性専門治療院アキュモード鍼灸院での不妊症やマタニティの方の施術のお話のほか、地域医療としての鍼灸の取り組み方、お灸教室を開催されるまでの経緯など藤崎先生ご自身のご経験を惜しげなくご披露くださいました。千里の道も一歩から。まずは地域のキーパーソンの扉を叩くことから。お子様をお持ちの女性だからこそ、の視点で、丁寧に地域の中で鍼灸の活躍の場を開拓し続けてこられたお話、大変勉強になりました。藤崎先生の地域活動のFacebookページ(ココロとからだにきく はりとお灸 +PLUS)はこちら

講演会の大トリは、長野市ではり・灸・マッサージいづみ治療院を開業されて今年で10年目を迎えられる丸山順子先生。不妊鍼灸、妊婦鍼灸を主軸とした女性専用の鍼灸院としての軌跡とキーポイントを気前よくご紹介下さいました。印象的だったキーポイントは、顔出しと信頼の確保。来院される患者さんがほぼ初対面の鍼灸師相手にさらけ出して下さるのであれば、私たち鍼灸師も顔出しをして信頼に値するように振る舞う。鍼道具ケースそのようなことをお話になられて確かにその通りだと頷くところしきりでした。丸山先生は、日本不妊カウンセリング学会のカウンセラーの資格もお持ちになっていらっしゃいます。
日頃温和堂が無頓着にして生きている女子力。丸山先生の麗しい鍼道具ケースに目を奪われてしまいました!温和堂の往療用鍼道具ケースはなにせおむすびケースですから!(これはこれでなかなか使いやすい)

パネルディスカッション
お話しのあとは、不妊治療をテーマとした座談会と実技供覧でした。
加藤先生がご披露くださった呼吸の浅い方への刺鍼はさっそく追試させていただきました!お陰さまにて感謝頂きました。ありがとうございます!!
上腕診不肖温和堂も、実技供覧をさせて頂くこととなり、胃腸の不調のご参加者の方に頭皮鍼を用いることとなりました。
温和堂の普段の臨床では、胃腸の不調であれば頭皮鍼以外の方法でアプローチすることが多いのですが、今回実は頭皮鍼で初めてトライしました。翌日のご感想を伺うと、「速攻で胃もたれが取れて食欲が出ました。今日も調子いいです。」とのこと。
思いがけず、頭皮鍼の有効性を実感できたよい機会となりました。ありがとうございます。
敬愛する工藤訓正先生のお言葉、「すべては必然である」を思い出しました。

今回、このような素晴らしい会をご企画、運営してくださった、東京鍼灸勉強会の茂木さん、加藤先生、そして当日のスムーズな司会を担当してくださったSさま、ありがとうございました。

東京鍼灸勉強会では臨床力のある勉強会が続々と企画されています!(Facebookページはこちら

長文お読みくださりありがとうございます。

鍼灸祭におもう〜古きを抱き生き続けること。

  • 2016.05.15 Sunday
  • 22:07

五医聖爽やかな五月晴れの今日5/15、温和堂は毎年五月第三日曜日に湯島聖堂で開催される鍼灸祭に参りました。

鍼灸祭(はりきゅう祭)は、鍼灸治療に関わる全ての偉大なる先達への感謝と、日々の施術を支えてくれる鍼灸道具、そして道具の作り手の皆々様への感謝を、五医聖に奉納する毎年恒例の祭事で今年で36回目を数えます。

祭事への参列を前に、鍼灸祭と11/23の神農祭の年二回のみ開廟する神農廟、薬草の神様・神農を詣でました。
神農廟 銀杏木立銀杏神農廟参詣のもう一つの楽しみは、関東大震災と東京大空襲による類焼を食い止めたイチョウの木々。

銀杏の木は火事にあうと根元からの水分を幹に吸い上げて、枝葉より大量の水を噴出して自己消火をするのだそうです。
銀杏のこの習性を利用して、火事の多かった江戸の町には銀杏が多数植えられたのだそうです。

神農廟という守られた空間にあって黒焦げの幹をそのままに残された銀杏は、被災後70年のときを経て、黒焦げの幹を大事に抱くように元気に成長をつづけています。
ひこばえ 銀杏今年は根元にたくさんのヒコ生えのチビイチョウの葉が出てきていて、その愛らしくも逞しい姿に勇気を得ました。

湯島聖堂の銀杏のほかにも、戦火や震災の火から類焼を防いだという被災樹木が全国には数多く生き続けているそうです。


自然観察大学の唐沢孝一氏の書籍に詳しく紹介されています。
よみがえった黒こげのイチョウ: 命を守り震災や戦災を伝える樹木』(大日本図書, 2001年刊)
唐沢孝一氏による上毛新聞の記事 (2010年8月14日)


祭事のあとは、毎年東洋医学にまつわる特別講演と鍼灸の実技供覧があります。
今年は、猪飼祥夫先生による「漢代以前の医学資料概観」と盒饗膣先生による「積聚治療の紹介」でした。

北里大学東洋医学総合研究所の医史学研究部で長く客員研究員として古医学を研究されておられる猪飼先生。
猪飼先生の幅広いご研究内容のなかから、漢(B.C.206-A.D.220)時代以前の医学関連の出土品を紹介していただきました。
1970年代の大発見となった湖南省の馬王堆漢墓遺跡以外にも、近年都市開発がすすんできた中国各地で新たな遺跡の発掘が相次ぎ、最近では四川省、湖北省や甘粛省などでも貴重な史料が多く出土してきているそうです。
出土された骨を精査する古病理学の研究結果としてわかってきたことに、抜歯のあとがみえることから紀元前の中国の人たちにも虫歯があったこと、生体の頭蓋骨に石器で穴をあけた手術痕がみられることから当時その技術力があったことなどがあるそうです。
興味深かったのは、土器などで煮炊きをする食性が出てきた頃から、生食の多かったころと比べると胃腸の疾患は減るも、虫歯が増えてきている傾向があるのだそう。心 甲骨文字

また、殷代(紀元前17世紀頃 - 紀元前1046年)に作られた甲骨文字の象形を医学的な視点でみてみると、「心」の甲骨文字は、解剖して内部の構造を確認して初めてこの形状の象形文字となるのではなかろうか、という猪飼先生のお話。大変興味深く伺いました。

実技供覧の講師の高橋先生がご紹介下さったのは、積聚治療。
病の原因は「生命力の低下」とみて、「生命力低下の回復」を治療原則とする鍼灸療法。
ご紹介いただいた内容に接し、東洋医学は古来より、病を症状という断片的なものだけではなく、病んでいるひとの生きる力に着目した総体的な治療を行う医療体系であることを再認識することができました。

情報過多の今の時代、古くからあるもの、古くからある知識や習慣などは、ややもすると軽んじられてしまうこともあるかもしれません。古来よりあるものでいまに至りなお受け継がれている物事というのは、被災銀杏のように生きるために黒焦げになった部分を新たな部分が抱合して生き続けることを選んだものなのかもしれない、とそんなことをおもう新緑の1日でした。

日々是新たなり〜Dr.山元のYNSA臨床研修に参加して

  • 2016.04.15 Friday
  • 18:06
昨晩の熊本の地震で被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げ、皆様の平安を祈念いたします。

 
山元先生とご一緒に
4/4〜8日までの5日間、宮崎の青島と日南の病院にてYNSA(山元式新頭針療法)の臨床研修に参加して参りました。
昨年9月に次ぎ二度目の参加。毎秒毎分が学びに満ちた充実した研修となりました。

温和堂はこの五年ほど週に一度ですが、18歳〜65歳の肢体不自由の方々専用のデイサービスへ出張施術に通っています。
脳性麻痺や脳血管障害の後遺症や進行性疾患などにより他者のサポートが必要な生活を送っておられるご利用者の方々の関節拘縮、筋緊張や麻痺の緩和、身体機能維持といった健康づくりを、鍼灸と徒手を用いお手伝いしています。
ご利用者の方によっては言語での問診が困難な方もおられることもあり、診断方法に悩みを抱えていた一昨年の初夏、幸いにもYNSAに出会う機会を得ました。
YNSA入門の師は、温和堂の鍼灸学校時代に同級だったお馴染みの先生でした。
大変優秀な先生であることに加え、同級のよしみもあり気兼ねなしに詳しく学ぶことができました。

一昨年前から数えて計8回のYNSAの基礎的講座を受講し、自身の臨床においても日々活用して臨んだ今回の研修。
昨年の初参加時には見えなかったことが見えてきたり、自己流となっていたことが浮き彫りになったり、と技術的な気づきが多々ある研修でした。

また朝から晩までの濃密な研修の5日間を共に学んだ21名のお仲間の先生方との肩肘張らない闊達な意見交換により前向きな刺激を得ました。志を同じくする各地のお仲間と知己を得たことは大変心強い財産であります。

そして、何よりも創始者である山元敏勝先生のお人柄と、先生の臨床姿勢に直に触れられたことが研修の最大の賜物でした。
40年以上の臨床経験のなかで自らのご検証を通して見い出されたメソッドを、御歳八十を超えられてなお新たな検証を重ね必要を潔く取捨選択し、刷新し続けておられるその弛まぬ全身全霊のご研鑽の姿勢。
「みなさんも熱心にやってください。中途半端ではなく。」山元先生の姿勢に触れ、このひとことは字面以上の意味を持って響きました。

山元先生はまた、「昔は針1本で(満足な治療が)できたのですが、いまの人たちは違います。」と。情報に溢れ、時間やタスクに追われる現代の生活で、ひとのからだは様変わりしているのです。山元先生は急速に変容するひとのからだの反応をつぶさに捉え、現況に応じた療法を工夫されていらっしゃるのです。

施療しながらポソッと口から出る呟きには、いずれも患者さんの症状をよくされたい、という温かいお気持ちを感じました。
「頭がもう一つあればなぁ。」
印象にのこった山元先生のつぶやきのひとつです。ある脳神経系の疾患の方への施療中のひとことでした。

「(病にあっても) 人間のからだには修復しようとする意欲があるのです。そこに刺激を与える必要があるわけです。」

刻々と変化していく生命と真剣に相対して初めて観えてくる、普遍的な生命の理(ことわり)。患者さんお一人お一人その時々にからだに現れる差異を見つけ、症状の緩和に役立てていく。理論に振り回されることなく、生命のことわりに寄り添う、そんな臨床力の極意を垣間見ることができました。

体表に現れる変化と病の相関性を捉える山元先生を拝見していると、古代の医聖たちもこのようにして、経穴(ツボ)や経絡を見つけたのだなぁ、と感じます。
実際、YNSAの診断法でとらえた治療方針は、見脈や四診を通した東洋医学の診立てと合致することが多いのです。

五十肩、腰痛などの運動器疾患や、中枢性の疾患に用いられることが多いYNSAですが、ホルモンバランスの失調や消化器系の不調にも著効します。

今回、私自身幸運なことに山元先生の治療を受けることができました。
数ヶ月続いていた、ホルモンバランスの変化に伴う心と腎起因の浮腫と息苦しさという症状が顕著に寛解しました。
受療後、10日を経てからだの状態が好転に向かっていることを実感しています。

研修参加からひと月くらいの間「研修マジック」というものが臨床で効く、とは参加者仲間で共通の感触です。
研修で基本に立ち帰ることや、先生の応用的な臨床から得た刺激でしょうか。
参加前と比べ、格段の症状の変化をクライアントさんに実感していただくことができ感謝の限りです。

マジックでなく、実力として定着するように修練いたします!!

山元先生、運営の方々、見学させてくださった患者さんの皆様、本当にありがとうございました。
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Yamamoto New Scalp Acupuncture(YNSA)は、医師の山元敏勝先生により1973年に考案された頭皮への刺鍼を主とする針の療法。
麻酔科医、産科医として、アメリカ、ドイツの病院でご活躍された山元医師が、故郷宮崎・日南市にて開業医として鍼麻酔での数多くの手術、中国式の頭皮針治療、良導絡などを経て辿りつかれた、体表に局在するソマトトープ(体性局在・somatotopy)への診断法と鍼治療用針を用いた治療法。
詳しくは、YNSA学会のウェブサイトをご参照ください。

黄帝内経 素問 上古天眞論篇 写経会

  • 2016.02.20 Saturday
  • 13:54
写経と低糖質薬膳食の会
温和堂はおかげさまにて本日誕生日を迎えております。
自分への贈り物として、素敵な会に参加してきました。
東洋医学のバイブル『黄帝内経』の『素問』の写経と低糖質薬膳食の会。
気流LABO





こちらの会を主催されたのは、北鎌倉の気流LABOの島田先生ご夫妻です。温和堂の卒業した鍼灸学校の大先輩の先生方でして、在学中よりご高名を伺いお会いしたいと望みつつ機会があわずおり、今日ようやく約10年越しの念願が叶いました。



上古天眞論篇
本日写経したのは『黄帝内経 素問』の巻第一の上古天眞論篇
写経をしている間、『黄帝内経』が医典として二千年以上伝承されているのは、こうやって写経をされ続けてきた幾千の東洋医学の先輩方のお陰様であることを体感することができました。

『黄帝内経』は幾度か当おんわブログにも登場している、古代中国に起源を生す医学&医術書です。鍼灸、湯液(漢方薬)、導引(体操、ストレッチ)、推拿(マッサージ)など各種伝統東洋医学が臨床において主として準拠するのが、この『黄帝内経 素問』と『黄帝内経 霊数』の二書となります。
上古天眞論は、ひとが生を享けてから第二次性徴、出産、中年、壮年を迎えやがて老衰を迎えるという一生の流れのなかで体験する身体の変化についてを詳らかにしつつ、健やかに天寿を迎えるために必要な養生について説くという篇です。
養命酒のCMでおなじみの ”女子は七の倍数、男子は八の倍数”の元ネタはこの上古天眞論です。養命酒のサイト (http://www.yomeishu.co.jp/x7x8/baisu/ )。

今日の会では、島田先生の簡潔明快な『黄帝内経』そして上古天眞論についての解説に加え、島田先生がお気に入りの上古天眞論の一節のご紹介をしていただきました。
島田先生ご推奨の一節を以下に記します。

夫上古聖人之教下也 古代の聖人の教えるところによると、
皆謂之虚邪賊風   みな以下のように説いている。
避之有時      虚邪賊風(異常気象時に吹く体調を損ねる風)を避けるように、
恬憺虚无(無)   そして心を安静で虚心であるように保つように、と。
眞氣從之      そうすると眞の気が充実してきて、
精神内守      精神は内を守るようになるので、
病安從來      病が入ってくるようなことはない。

”こころを安静で虚心に保つ。”
上古天眞論ではその状態を保つ養生、つまり四季に応じ日照時間に合わせた生活や規則正しく節度ある寝食、無理のない生活をしていれば、ひとは健康に百歳まで生きられる、と説いています。

はい。
誕生日に、敬愛する黄帝から授かった贈り物は、最近乱れがちだった寝食をみなおすという有難いメッセージでした。

そして、低糖質薬膳食は目からウロコの、のし豆腐麺と醤蛸と醤浅蜊、しめじのカルボナーラとデザートにおからと抹茶のシフォンケーキでした。

生活養生と食養生。自分の手足で自立した生活を送るための屋台骨です。

深謝深謝の一日でした。

井穴刺絡で風邪しらず

  • 2016.01.21 Thursday
  • 22:16
 三稜鍼初期の風邪気味喉のイガイガ感に、井穴刺絡の抜群の著効ある、を体感している最中です。

今日は、朝の晴天にうっかり少し薄着で往療先に出掛けてしまいました。帰りしな、日暮れとともに急落した寒気に喉がイガイガし始めました

晩にご来院頂きました方がご帰宅後、すかさずセルフ井穴刺絡。

太陰経井穴への刺絡はスーッと鼻腔までスッキリ。

刺絡は微少循環の血行疏滞を改善する、と解剖生理学的に説明します。ニ千年以上前に記された東洋医学のバイブルである、古医書『黄帝内経 霊枢』 九鍼十ニ原篇には、刺絡について「宛陳(うっちん)すれば之を除き、邪勝つときは之を虚す。(後略)」と説かれています。刺絡処置後みるみるうちにスーっと喉のいがいがが引き、全身がめぐり始めているのを感じています。自然治癒力のスイッチがONとなりました。

 

初期の風邪は、大椎(第七頚椎と第一胸椎の棘突起間。顎を下に向けた時に頸の付け根で一番出っ張る箇所) を湯たんぽやカイロなどで温めることと、井穴刺絡、梅干し茶、そして暖かくしてゆっくり休眠。
これで翌朝はスッキリです。兎にも角にも早めの養生!です。

おやすみなさいませ!

鍼の威力!〜三叉神経由来の歯茎の腫れに頭皮鍼が奏効した例

  • 2015.12.21 Monday
  • 03:24
 冬至間近となりました。久方ぶりの投稿は温和堂のセルフ症例のご報告です。

鍼の威力の素晴らしさに心の底から震えるような体験をしました。
いま現在も進行形で益々よくなっているのを実感しています。

施術前後人相がかわるほどに腫れ上がった三叉神経由来の下顎の腫れが、受療後半刻のあいだにみるみるうちに消失した、という症例です。



温和堂は6月から半年間毎月一度、東京鍼灸勉強会主催・神谷哲治先生のYNSA勉強会という、頭皮鍼の勉強会を受講しておりました。
その勉強会の最終日として受講生が互いに治療を行う試験があった12/20、丁度良いタイミングで治療を受けることができました。
この頭皮鍼治療は、からだの反応をみながら治療点を決めていくという方式の療法です。今日の私のからだの反応が示したのは、奇しくも三叉神経疾患の治療点のすぐそばのポイントでした。そのポイントともう2点、計3点だけの刺鍼で、瞬く間にからだに変化が現れてきました。

症状発現の状況から治療後におきた変化を時系列に記してみます。

12/10から歯科治療を受けている左下奥歯の歯茎が痛み出したのは、4日前12/17のこと。
翌日の12/18より患部下顎部が腫れ始めました。
腫れは時間を追うごとに大きくなり、翌朝には患部含めた左の顔面部が熱を帯び始め頭痛もでてきました。痛み出現の2日後12/19に紅潮し腫れた下顎部の画像をご覧になられた鍼灸の大先輩先生からツボをアドバイスいただき、セルフ鍼と灸を行い、頭痛と熱感は治まりました。
痛みの箇所を観察すると、三叉神経第三枝・下顎神経の出てくる頬車穴と大迎穴のあたりに圧痛がありました。翌日の治療試験では格好のモデル患者となれると確信したので敢えて寝て休むことを優先しました。

12/20朝明けて12/20の朝、痛みや熱感は少ないものの腫れが大きくなっていました。下顎部の圧痛と耳の前にかすかな痛みを感じ、三叉神経由来の症状であることにさらなる確信を得て勉強会の会場へと向かいました。左の画像はその朝撮ったものです。
下顎がじゃがいものように腫れています。頬の口腔側の筋肉の腫れが強く口角を意識して閉じていないと唾液が漏れ出そうな位でした。
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右の画像は受療直後、口腔側の頬の筋肉(口のなかの頬の肉)の腫れが秒単位でどんどん引いて行っているのを感じて、嬉しさのあまりに顔がほころんでいる様子です。

3日間、まともに口を開けることすらままならなかった状態が、刺鍼後5分ほどで口を開けることができるようになったのは思いの外、嬉しいものでした。
空気が入ったエアーバックのように左の下顎の口のなかを占めていた頬の筋肉が、秒単位でエアーバックの空気を抜くように萎んでいくさまは、初めて体験しました。

この2日間は食欲も出ず、また頬の口腔側が大変腫れていたため水分と流動食だけのほぼ絶食に近い状態でした。歯茎や頬の口腔側の腫れは不便でしたが、からだがまさにからだを張って「食べないで!」というメッセージを出していたようにも思えました。

ただし、三叉神経痛をあまり長く放置するのは症状の複雑化や悪化を伴うこともあります。そのタイミングでの受療でした。鍼灸の勉強を続けていて本当によかったと思う瞬間でした。

三叉神経上に症状が出るときは、からだに疲労が蓄積している、ともいわれます。
実際、11月の温和堂は毎週、福岡の祖母のケアプランの立ち上げのために東京と福岡を空路で往復していました。責任を伴う決断や役所の書類取得などなどフライトだけでなく普段使わない神経を使っていたのでしょう。

からだは、いろいろな手段を使って、休養の必要を訴えてきます。
そのからだの声を丁寧に聞き取り、無茶をしないで仲良く過ごす事。
これこそ、養生の極意です。
そして、鍼灸はその自然な養生を無理なくサポートできるのだ、ということを
今回のセルフ症例を元に改めて実感することができました。

この鍼法を日々の臨床の研鑽の中から生み出された山元敏勝医師、そしてその方法を伝えておられる神谷先生はじめ多くの先輩方、今回の勉強会を主催された東京鍼灸勉強会、そしてともに半年を学んだ同窓の先生方に深い感謝の意を表したいと思います。

良くなる、という実感もまた生命の根っこ力を強くしていくのだなぁ、としみじみ思う丑三つ時。
養生のためにはこの時間は、ゆっくり睡眠をとっているほうがよいのですが。。。

石臼の艾(もぐさ)づくり・森のくすり塾

  • 2015.10.28 Wednesday
  • 23:23
森のくすり塾
別所温泉に移り住んだ友人のご縁で、『僕は日本でたったひとりのチベット医になった』の著者でチベット医・薬剤師の小川康さんの薬房、森のくすり塾を訪問させていただきました。
はとむぎ
ハトムギの実を穂から外す手脱穀作業をしながらいろいろなお話を伺いました。
大豊作のハトムギは小川さんがご自身の畑で自然栽培されたもの。薬房の前には大量のハトムギが日干しされていました。ハトムギ日干し訪問した前の晩も夜なべで一粒づつ手で実を外す作業をしていて、この作業をなんとかもっとよい方法でできないか、と途方に暮れてしまったのだそう。
友人の自家焙煎淹れたてコーヒーを手元において3人でおしゃべりをしながら、”茶飲みしごと”をしていると意外と作業ははかどったたようでした。
ひとりだと途方に暮れますが、ひとが集まると人手のこもったしごととなるものですね!手仕事ゆえ穂にのこった取りこぼしの実はありますが(すみません。。。)、それらも鳥や虫などの腹を満たし、自然に還ることでしょう。
このように栽培されたハトムギの脱穀作業をすること、そのこと自体もチベット医学にとっては、医療の一環である。臨床することだけではなく、生活のなかにこそ医学がある、というようなことを小川さんはおっしゃっていました。
 
東北大学薬学部をご卒業後、小学校での理科の教育や薬草の研究、栽培に携わられてから、渡印しダラムサラにあるチベット医学の大学にあたるメンツィカン(チベット医学暦法学研究所)でチベット医学を学ばれ(外国人としては小川さんが初めて合格)、断崖絶壁での薬草採取やチベット医学の古医書『四部医典』八万語の暗誦などの数々の難関の卒業試験を経て、外国人として初めてアムチ(チベット医)の認定を受けられた小川さん。
現在は「森のくすり塾」で、薬草の栽培や採取を通して自然のなかの医の普及を実践されていらっしゃいます。
2014年のTEDxSakuでのトークの録画で大変興味深いお話が聞けます。
 
石板薬研はとむぎ作業がひと段落したところで、小川さんは鍼灸師垂涎の道具を見せてくださいました。
石の洗濯板のようなこの道具は、お灸につかう艾(もぐさ)をつくるためのもの。
石臼、と呼ぶのか石薬研とよぶのか、独特の形状です。
手作りのこの石板は作製者の方から薬草を手作りする小川さんに、と縁づいてきたそうです。
 
小川さんは、艾の原料である蓬(よもぎ)などの山野の薬草を積むツアーもされています。この道具はツアーの一環で艾をつくるなどで使っていらっしゃるのだそうです。

 
よもぎの葉裏の繊維
艾(もぐさ)は、草餅の原料ともなるよもぎから作られます。
キク科ヨモギ属は北半球に広く分布する植物で中国大陸、朝鮮半島、日本列島で艾という治療用具として永く利用されています。道端でよくみかける草餅用のよもぎも艾として使われる品種です。みつけたらちょっと葉をめくってみてください。裏側に白いふわふわとした毛があります。この白い繊維だけを集めたものがお灸のもぐさとなります。
精製具合によって用途が異なります。繊維だけの状態にまで精製させたもぐさは、温度の低い艾柱(がいしゅ)になるため肌に直接据える小さな半米粒大の透熱灸に適し、より高い温度の艾を必要とする灸頭針(針の上に艾玉をつけて輻射熱で暖める)や温感がでたら取り去る知熱灸、または棒状にかためた棒灸には、粗い精製度で高い温度となる粗もぐさが適しています。

艾←今回つくった艾。
2、3度ふるいをかけて細かい葉の粉や茎、葉の滓などをとり除いたもの。
精製度やや粗めの知熱灸に適した艾
透熱灸用艾       
透熱灸用の精製度の高い艾→


 
温和堂が鍼灸学校に入学直後の5月のこと。自分たちで艾をつくるという課題が出されました。グループごとに自分たちで製法を調べ、よもぎの新葉を採取し、道具を駆使して、自力で艾をつくり発表するというもの。
製法を図書館で調べてみると、1)乾燥 2)繊維と葉の成分を分離する 3)精製するの3工程が必要なことがわかりました。古来の製法では、自然乾燥させ、石臼で挽き、唐箕で夾雑物をふるい分ける、とありました。
私たちのグループでは、水気をドライヤーなどで乾燥させ、石臼のかわりにすり鉢を使い、調理器具のふるいを使ったように記憶しています。乾燥が十分でなかったことで葉や茎など夾雑物が多く残る艾ができあがったことはハッキリと覚えています。
 
森のくすり塾でのもぐさ作りは、小川さんが春に採取された完全に乾燥されたもぐさを使っての作業でしたので10年前の学生時代の初もぐさ作りと比べて遥かに快適でした。
もぐさつくり
石板の上に乾燥させたよもぎ葉を置き、握りやすいように加工された石をゴロゴロと転がす。それだけなのですが、あれよあれよという間に繊維が分離されてきます。石の素材と重み、板の上に手彫りでひかれた多数のすじ。この3要素がこの道具の肝なのだと思われます。
時間をかけて挽けば、精製度が上がってくるかと思います。
 
右の画像で小川さんが手の合谷というツボにおいているのは大きな艾柱の知熱灸。熱く感じたら外します。小川さんはこの夏、もぐさを焚いて蚊や蜂の襲来を防いでいらっしゃったそうです。
 
別所に春がきたころに、この石板薬研をつかったもぐさ作りのワークショップをさせていただきたいな、と考えています。参加希望の方はいまからでもよいのでヨモギをみかけたら、採取して乾燥させておいてください!
 
採薬師の小川さんによると、艾に最適のよもぎの品種は上越のほうでよく採れるのだそうです。
用途別のよもぎを産地に訪ねる採取旅もしてみたいものです。
「鍼灸師さんもみんな、自分でもぐさ作ればいいのにね」と小川さん。
はい。いつかは看板に「もぐさ挽きたて」と掲げたいとおもいます。

(補足:低温施灸の透熱灸用もぐさは3年以上寝かせたものがマイルドな温感となります。
挽きたてもぐさは、直接肌に透熱させないタイプの高温施灸の知熱灸や棒灸により適しています。)

蚋(ブユ)刺されにお灸と井穴刺絡 〜セルフ症例〜

  • 2014.06.13 Friday
  • 02:32
蚋(ブユ/ブヨ/ブト)に噛まれました。
 (wikipedia ブユ リンク→http://ja.wikipedia.org/wiki/ブユ
久方ぶりの投稿は、セルフ症例報告です。

6/8先週の日曜日に訪れた山梨の里山で四か所こぴっと噛まれて帰ってきたようでした。
「ハエのような虫がたかってるなぁ」と追い払い追い払いおりましところ、いつのまにやら噛まれていたようで出血痕がありました。その日は痛み、痒みなど症状はありませんでしたので気に留めておりませんでした。
6/10午前01時18分明けて翌日の月曜日6/9の晩から痒みが急増。
日にちをまたいで6/10午前1時、痒みのため目が覚める始末。6/10午前01時17分
出血痕があったことと、患部付近でみかけたのはハエのような大きさの黒っぽい小さい虫であったことを思い出し、原因はブユに相違ない、という結論となりました。

ブユとなると厄介です。早めに処置をしないと強烈な痒みと痛みに数週間悩まされることや、リンパ節の炎症が起こることもあります。また掻き毟るなど対応が悪いと痕が酷い状態で残ることもあります。
すわ一大事。夜半ではありましたが、急いで鍼灸道具を持ち出しました。
噛まれていたのは計四か所。左手背部、薬指の中手指節関節(MPJ)の直上と、中指と示指のMPJの間。その他に左前腕背面の橈側と尺側に一か所ずつ。前腕橈側の患部はツボでいうと温溜穴付近。

まずは患部のある経絡に該当する井穴(指端爪の根本にあるツボ。毛細血管、動静脈吻合枝のあるところ)で鬱血が爪甲にみられるツボから、商陽、中衝、関衝、少沢を選択。井穴刺絡瘀血(オケツ)の処置をしました。

腫脹により中手指節関節(MPJ)の屈曲動作が困難でしたが、井穴刺絡の後は、多少動かせるようになりました。まだ鈍く重だるい感じが母指以外の手指と前腕に残っていました。
八邪穴という手の水かきの部分にあるツボに台座灸を据え、患部には直接もぐさを据える透熱灸を行いました。
施灸の後ようやく前腕と手背部、手指にのこっていた重だるい熱感が少し引きはじめました。痒みと痛みも軽減され、腫脹もすこしおさまり始めました。

6/10午前翌6/10の朝、手背と前腕の腫脹は少しおさまり、熱感も落ち着いていました。
午前7時ころ、井穴刺絡と八邪穴、患部への施灸を同様に行いました。
ドクダミ茶加えて、ドクダミ茶で排毒を促しました。
6/1013時38分午後にご予約を頂いておりましたのでご来院の前、13時半ころに再度同様の井穴刺絡と施灸を行いました。手指の屈伸が昨晩と比べ容易になり、施術への影響は出ずにすんだため安堵しました。
右利きの温和堂にとって、左手は鍼を固定する押し手です。噛まれたのが母指と示指の間であったとしたら、さぞや刺鍼に影響しただろうと考えると肝を冷やす思いでした。「鍼灸師は手が命」です。

6/10午後22時10分お灸6/10治療院の仕事を終え、ドクダミ茶とお白湯、小豆汁で積極的に排毒を促しつつ、22時半頃に就寝前の施術を行いました。
随分と腫脹が軽減しています。6/10午後22時37分

井穴刺絡と施灸後は、腫脹と色などの見た目の変化もさることながら、熱感や重だるさといった自覚的な所見に著明な変化が出てきました。


小豆汁6/11。起床後すぐに小豆汁を飲み、排毒。
さらに朝食に小豆玄米粥、そしてタイミングよく祖母から送られてきた自家製の梅味噌を頂きました。小豆粥鍼灸でからだの外からの働き掛けを、飲食でからだの中からもしっかり自然治癒力の立て直しを応援してみました。

6/11夕方拳6/11午後、腫脹は顕著に軽減しました。痛みも完全に消失、手指の動きも元通りになり、仕事への支障は全くないようです。
6/11夕方痒みはかなり引いてはいるものの、過食した後と塩分を過剰に摂取した後に多少痒みが再発することが観察からわかりました。いずれもドクダミ茶か白湯で痒みは軽減します。噛まれ痕も縮小してきました。
前腕掻き毟ってしまった噛まれ痕が2つあり、これらの傷跡には水ぶくれができ、皮下は結節性痒疹のように硬くなっています。施灸を続けているうちに好転していくことが見込まれます。


12June拳
12June手6/12。すっかり腫脹は消失しました。
高温の環境や、運動をして体温が上昇しても痒みの出現はありませんでした。
患部付近をふれると痒みが再発します。
鍼先が皮膚に軽く触れる手法の散鍼をすると痒みは収まりました。しばらく、施灸と散鍼、ドクダミ茶や小豆湯を継続していきます。飲酒でどのような変化がでるかは、勇気がなくて試しておりません。

まだまだ油断はできませんが、6/9の発症から数えて4日間での治験症例としては、井穴刺絡、施灸ともに著効あり、と呼べるのではないかと思います。

夏に向かい野山海川など自然に入る際は、皮膚を覆う着衣を心がけること。虫よけを使うこと(ミントなどハーブの精油を用いた自然素材のものが好ましいですが)、そしてせんねん灸など簡便に使える台座灸を携行すること、最後にライターと灰皿もお忘れなく!


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