切れ味は味のうち

  • 2016.01.16 Saturday
  • 04:13
松が明けました。
本年もよろしくお願い致します。
研ぎ
新年初めの投稿は、切れのあるお話から。
今日はご縁がありまして、西荻窪の醸(かもし)カフェさんで開催された包丁の守り方と研ぎかたのワークショップ "食材がこんなに美味しく活きる、料理は先ず『切ること』から!料理包丁の在り方、研ぎ方講座” に参加してきました。
庖丁の守り方、という表現は初耳です。
伝えて下さったのは、京都は南丹の工房・食道具竹上さんの庖丁コーディネータ廣瀬康二さん。
庖丁の在り方講座包丁を単なる刃物では無く、日々の食生活に不可欠な道具として庖丁に寄り添って扱って欲しい、というメッセージを込めて次のように庖丁の「守り」について説明されました。
「普通、庖丁には"管理"という言葉が使われますよね。
朝昼晩のお料理に使う包丁に一日の終わりに"庖丁さんありがとうね"、と心を寄せ同じ目線に立って見守るように庖丁を扱っていただきたいな、と思って”守り(もり)”という言葉を使っています。」

庖丁の「守り」具体的に何をするか、というと日々のメンテナンスです。
使用中のこまめな拭きとりと使用後1日の終わりにクレンザーでしっかり磨き洗い。「洗剤で洗って落ちるのは、油よごれのみ。野菜のアクなどは研磨剤で磨き取る必要があります。この時刃だけでなく柄の部分もしっかりクレンザーで洗いあげてください。柄の部分によごれが溜まるとそこから錆びたり木が破損したりすることにつながります。」
日々の守りをしっかりしておけば、切れ味が長持ちし易くなるのだとか。それでもたまには砥石をつかって刃先を磨きあげておくと、シャープな切れ味が持続するそう。
参加者の方から簡易シャープナー(円盤状の砥石の歯車の間に庖丁の刃先を入れて前後させる道具)について質問があがったのに答えて、廣瀬さんの回答は「ステンレス製の庖丁なら使用可だと思いますが、クレンザーによる日々の守りをしていればシャープナーの必要性はあまりないでしょう。鋼の庖丁には使わないでください。刃先の鋭い形状がなくなってしまいます。」そうですよね。よく考えてみたら、庖丁は金属製。クレンザーを使えば十分簡単な研磨になるのですよね。


研いで頂いた母の和庖丁実はこのワークショップ、事前に調整していただいた庖丁をつかっての研ぎ実践という大変手間の掛かったものなのです。庖丁は日々使ううちに厚みに差がでたり柄と刃の接続が緩むなどの歪みが出るもの。そういった歪みがあると鋭い磨ぎ上がりまでに時間が掛かってしまうとのことで、事前に竹上さんの工房で叩き直しや磨きいれをしていただいていました。

温和堂は、母の遺した和庖丁を2丁調整に出しました。あべの辻調理師学校で調理師免許をとった母。温和堂の台所には何丁も鋼の和庖丁や5台ほどの砥石が遺されています。私自身はステンレス製のお気楽庖丁の使用経験のみの人なので、本格的な鋼の庖丁など畏れ多く、いままで放置してきたのです。調整していただいた母の出刃包丁、実はとても珍しいものでした。出刃包丁は片刃のものがほとんどなのですが、母の出刃は両刃のものでした。一体なぜ両刃なのか、いまとなっては知る由もないのですが。。。

竹上の庖丁講習時間のなかで幾度も、「素材を活かすためには鋼の庖丁でないと。」とおっしゃる廣瀬さんのメッセージが耳に残っています。
ステンレスというのは、”錆びない”ことを特性としてデザインされた金属のため、どうしてもスカッとした切れ味をだすことが難しいものなのだそう。
それにひきかえ鋼は、スカッと鋭利な切れ味をだすことを目的にデザインされているため、スッとシャープな切れ味が持続するのだそう。
鋼の短所である錆びは、守りや研ぎといった日々のメンテナンスで十分防ぐことができるもの。錆びない素材で切れ味を落とすよりも、切れ味を生かして錆びさせない工夫をすることで、より素材を活かした食生活を送ることができる、ということなのです。

また、廣瀬さんは和庖丁のよい点として、一生使う道具としての庖丁がしっくりと手になじむように作られていることをご紹介されました。
柔らかな朴の木を柄の素材にすることで使ううちに手の形に合うように変化するのだそうです。そして柄と刃の接続部には水に強い水牛の角が使われているのだそうです。昔の日本の奥深い知恵の片鱗が庖丁という道具のなかに息づいているのですね。


tomato料理の決め手は切り口と出汁である。切れ味は、和食の五味の一つと説く人もいる、と廣瀬さん。
美味しいと感じる項目には、切り口の整った美しい見た目、エッジのたった歯ごたえや舌触りといった触感、細胞が生き生きした鮮度、スッと味が馴染んだものなどが挙げられます。どれも切れ味のよい庖丁のなせる技なのです。そういえば、(個人的にはキビシイのですが)活き造りのお造りは切れ味の鋭い庖丁だからこそできる職人技なのですね。お野菜も切れ味のよい庖丁をつかうと細胞膜の傷つきが最小に抑えらえるため水が出てきたりすることも少ないのだそうです。また切れ味のよい庖丁でひいたお造りは滑らかな表面で余分なお醤油が流れ落ちるため、素材の味に丁度あった調味料づかいができ、そして切り味よく捌かれれば、食材あますところなく使え、無駄を省くことができます。

研ぎの終わった庖丁の柄の根元を指でつまんで最小の力でトマトを切る、という実験にも挑戦。研ぎ終わったばかりの鋭利な刃は、力を要さずとも庖丁そのものの重みでスッとトマトの皮を切ることができました。
本当にシャープな切り口で見目麗しく美味しいトマトでした。素材が活きていることを五感で実感することができました。

道具を大切に、素材を大切に、力を入れずに。この要点は鍼灸の道やその他いろいろな道において共通して意識する点です。

「例えば大工さん。道具に気を配ってきちんと調整をして、道具の整理整頓している人はよい仕事をされます。」

日々のメンテナンスと整理。
庖丁研ぎを学びにきたのですが、人生においても私の生業においても活かされる肝腎なことを得た三時間でした。
最後に、砥石は30分以上お水に浸水させること、砥石と刃からでる泥をつかって研磨すること、を研ぎの備忘録として残します。
ありがとうございます。
コメント
コメントする








    

calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM