めぐるめぐるよ血流は。:井穴刺絡の講義

  • 2016.06.12 Sunday
  • 23:00
井穴刺絡今日は所属学会の基礎講習会での講義のお勤めをしてまいりました。

刺絡、という鍼法のもつ類稀なる有効性と、その鍼法の技術と知識を伝え継いでくださっている大先輩の先生方に感銘を受けてから約10年、講師陣の一隅に入れていただいてから6年ほどになります。そして東京でのお勤めは今日が最後です。ありがとうございました。
 
そして井穴刺絡の講義は今回で3度目。
受講される皆様にわかり易く、かつ臨床的な内容となれるよう、また前任の大先輩の先生のお伝えくださっていた内容に少しでも近づけるよう、と色々な思いが募りすぎて空回りしてしまっていたかもしれません。
 
血行動態が良好であること、これに勝る健康状態はないと言っても過言ではありません。
鍼灸、ことに刺絡鍼法は、疏滞しがちな末梢循環の血流を円滑にするのに優れた療法である、ということを証明するデータは多々あります。数千年前から脈々と受け継がれている古典の記述しかり、3μの内径の微小循環を可視化できる最新の科学技術による観察しかり、また井穴刺絡と脳血流量の基礎研究を共同で実施してくださっている医師の先生との研究結果しかり。

数千年も前にすでに体系的に記録されていた治効機序を、光学機械などを駆使した現代の最新科学技術が少しづつ証明しつつある。
科学の温故知新を実体験として感じることができる、そんな時代に臨床鍼灸師として居られることはとても幸せなことなのだなぁ、と今日の講義にむけた資料づくりをしながらじんわりと思いました。

この途轍もなく深淵で興味つきない世界を言語化してお伝えしていく、という大変チャレンジングで素晴らしい機会を与えてくださった先輩方に心からの御礼を申し上げます。

新天地ではまた新たに関わらせていただきたいと存じます。よろしくおねがいいたします。

そして、編集委員として学会誌を通してお伝えできることにも精進を続けてまいります。

深謝。

梅の日の梅仕事

  • 2016.06.06 Monday
  • 23:45
梅仕事1今日、6/6は梅の日なのだそうです。

ときは室町後期1545年。
長引く晴天からの日照りに悩まされていたところ、後奈良天皇が神のお告げを受けます。
お告げに従い、梅を賀茂神社の賀茂別雷神に奉納し祈祷を捧げると雷鳴とともに天水が降り、五穀豊穣となった、という故事にちなむのだそうです。
また梅を奉納して降った雨を梅雨と呼ぶようになったのだとか。

温和堂にもちょうど昨夜、福岡の祖母の庭で収穫した梅が宅配されました。
一晩追熟させ、今日約2kgほどの梅仕事をしました。
梅干し用の塩漬け梅と、糖分を使わない梅酵素ジュースです。

昨年は、6月半ばの七十二候の「梅子黄(梅の実黄なる)」に梅仕事をしたことを考えると
今年は少し早い梅仕事始めです。

梅仕事の醍醐味は、その香りです。
ジメジメとした梅雨の重たい湿り気のなか、ぱぁっと立ち上る梅の香気。
梅仕事をするようになってから、梅雨の憂鬱感が軽減しました。

市場に赤紫蘇が出回るようになる7月上旬から中旬までは、あがってきた梅酢で梅の実を浸しカビないように気をつけます。
赤紫蘇を入れない、白梅干しはこのまま土用干しまで梅酢をあげながら待ちます。
赤梅干しは、塩もみしてアクを抜いた赤紫蘇を梅酢につけ、塩漬け梅に色をつけていきます。
第二弾の梅仕事、去年の模様はこちらから。

さぁ、今日仕込んだ塩漬け梅は明日どれくらいの梅酢をあげてくれるでしょうか?
東京で漬けた梅干し用梅は、18%の塩梅としました。

たのしみですね!

 

温和堂 7月末に福岡に移転のお知らせ。

  • 2016.06.05 Sunday
  • 17:56
温和堂はりきゅう院 看板おしらせ

本日、6/5は、二十四節気の芒種(ぼうしゅ)。
芒=のぎのある穀物やイネ科などの穂の出る穀物の種を播くのに適した時候を知らせる暦。
秋に向けての収穫を祈り種を播く、そんな新月の今日、温和堂よりみなさまにお知らせを申し上げます。

平成24年8月のオープンより東京・板橋にてご縁を築かせて頂いて参りました温和堂はりきゅう院。
本年平成28年 7月末に福岡県へ拠点を移すことと相成りました。
5年弱の短い期間ではございましたが、ご縁を頂きました皆様そして皆さまのおからだから多くの大切なことを学ばせていただきました。

福岡での拠点が定まりましたらまた、こちらにてご報告申し上げます。
しばらくの間、毎月第二週後半から第三週前半にかけて東京に参ります。ご連絡頂けましたら個別に対応申し上げます。 

新天地では、暮らし方、からだと自然との付き合い方にさらに密着した形での活動をしてまいります。

温和堂はりきゅう院 主人 野間 希代巳 拝   平成二十八年六月五日 芒種 新月

七人の女鍼灸師

  • 2016.05.25 Wednesday
  • 12:24
七人の女鍼灸師晴天満月の5月22日。
「七人の女鍼灸師」という東京鍼灸勉強会主催の講演会で、七人のうちの一人としてお話をするという機会を頂きました。
七人の女性鍼灸師が、それぞれ鍼灸学校卒業後どのように臨床の道を歩んできたのか、というお話と不妊治療に関するシンポジウムそして実技供覧というプログラムの会。
参加者は、鍼灸学校の学生さんだけでなく、現役鍼灸師さん、そしてお灸の大先生までをも含む満員御礼の講演会でした。

錚々たるお顔ぶれの壇上の先生方のお話を、自分がスピーカーであることをすっかり忘れて聞きいってしまいました!先生方の豊かなご経験、深い洞察と弛まぬ研鑽に触れ、大いに刺激を受けました。

講演を終え、女性鍼灸師だからこそお手伝いできることは本当にたくさんあるのだ、ということを時間を経て、じわじわと実感しています。
そしてひととのご縁の大切さ、精進を続けることで必ず道は拓かれる、ということ、また信頼を築くには丁寧に生きることが大切、というメッセージも頂きました。
七人の女鍼灸師と七本のcava
温和堂は今年、開業して5年、鍼灸師10年目を迎えるのだ、としみじみ。10年間走り続けてきた軌跡をお話することで、拙くはあれど一人の女鍼灸師の辿った道から反面教師でもよい、なにかヒントになるものを見出して頂くことがあらば嬉しい限りです。
いままで先輩の先生方から私が頂いてきた数え切れないご恩をわずかではありますが、お返しできたのではないか、とほんの少し肩の荷が下りた心地もしています。
大先生からの差し入れ。七本のスパークリングワイン!ありがとうございました!

講演会の先陣を切られたのは、外石(といし)晶子先生。目黒の鍼灸治療院セラキュアでチーフとして、不妊治療をはじめとする多様な疾患に対応されていらっしゃいます。女性の妊娠に関わる医学的専門知識をもとに全身のバランスを整える治療をされている様子をご紹介いただきました。外石先生は、コミュニケーションの大切さ、相手のこころに沿った対応をとることができる臨床家たることの大切さを強調されていらっしゃいました。初心忘るべからず。はい。

海老原美香先生は、アメリカの大学でスポーツトレーナーの学位を取得されてから、アロマやフラワーエッセンスの資格取得後、鍼灸学校で教員資格までとられた大変研究熱心な先生です。鍼灸学校での教鞭のほかに、有隣館日暮里鍼灸整骨院​久庵鍼灸マッサージ と往療、と臨床もしっかりと実践されていらっしゃいます。鍼灸師やアスレチックトレーナーの後進の実力の底上げに本気で取り組んでいらっしゃる頼もしい先生。世代交代が必要なときに若手が育っている、のは大事なことですよね!海老原先生、日本の未来のためによろしくお願いいたします!!
 
今回の講演会を企画された東京鍼灸勉強会の主宰のお一人でもある加藤且実先生は、温和堂の母校の鍼灸学校の大先輩で、多摩川駅の浅間神社ふもとにある、正和堂はりきゅう治療院の院長先生です。臨床歴今年で23年となる大ベテランの加藤先生。お話のなかで転機の際に出会われた大切なお言葉をご紹介いただき、人生を紡ぐのはひととのご縁だなぁ、と。天津中医薬大学第一附属医院直伝の中国鍼で数多くの難治の患者さんを治癒されてきた加藤先生の元気の源は臨床にあるのですね、とお会いする度に思います。そうそう、今回初めて、加藤先生の頼もしい二の腕はトライアスロン仕込みということを知りました。いつも後進の私たちに学びの場とご縁をありがとうございます!!

温和堂が、学校卒業後に受講した東京九鍼研究会で鍼先感覚の極意を教えて下さったのが、宇田川静香先生です。鍼先になにを感じるのか、それをどうするのか、宇田川先生に教えて頂いたことは温和堂の宝物として一生磨き続けてまいります。宇田川先生は東明堂石原鍼灸院で長年お勤めになられた後、現在はご郷里の福岡・筑紫野でおひさま鍼灸院の院長をされています。古代九鍼を駆使して様々な疾患の治療をされていらっしゃいます。おひさま鍼灸院で開催されている妊産婦さん向けの教室のお写真を拝見すると、画面には宇田川先生のお人柄と笑顔溢れるあたたかい空間が広がっていました。通院されている妊産婦さんのなかには、6人目をご出産された方も!産前産後のからだのケアを安心してお願いできる鍼灸院があるって素敵ですよね!

藤崎由起子先生は、鍼灸に関する学術論文を検証されたご経験をお話し下さいました。海外からの鍼灸関連の学術論文や臨床報告資料はいまやインターネットで容易にアクセスできるのですよね。
外苑前にある女性専門治療院アキュモード鍼灸院での不妊症やマタニティの方の施術のお話のほか、地域医療としての鍼灸の取り組み方、お灸教室を開催されるまでの経緯など藤崎先生ご自身のご経験を惜しげなくご披露くださいました。千里の道も一歩から。まずは地域のキーパーソンの扉を叩くことから。お子様をお持ちの女性だからこそ、の視点で、丁寧に地域の中で鍼灸の活躍の場を開拓し続けてこられたお話、大変勉強になりました。藤崎先生の地域活動のFacebookページ(ココロとからだにきく はりとお灸 +PLUS)はこちら

講演会の大トリは、長野市ではり・灸・マッサージいづみ治療院を開業されて今年で10年目を迎えられる丸山順子先生。不妊鍼灸、妊婦鍼灸を主軸とした女性専用の鍼灸院としての軌跡とキーポイントを気前よくご紹介下さいました。印象的だったキーポイントは、顔出しと信頼の確保。来院される患者さんがほぼ初対面の鍼灸師相手にさらけ出して下さるのであれば、私たち鍼灸師も顔出しをして信頼に値するように振る舞う。鍼道具ケースそのようなことをお話になられて確かにその通りだと頷くところしきりでした。丸山先生は、日本不妊カウンセリング学会のカウンセラーの資格もお持ちになっていらっしゃいます。
日頃温和堂が無頓着にして生きている女子力。丸山先生の麗しい鍼道具ケースに目を奪われてしまいました!温和堂の往療用鍼道具ケースはなにせおむすびケースですから!(これはこれでなかなか使いやすい)

パネルディスカッション
お話しのあとは、不妊治療をテーマとした座談会と実技供覧でした。
加藤先生がご披露くださった呼吸の浅い方への刺鍼はさっそく追試させていただきました!お陰さまにて感謝頂きました。ありがとうございます!!
上腕診不肖温和堂も、実技供覧をさせて頂くこととなり、胃腸の不調のご参加者の方に頭皮鍼を用いることとなりました。
温和堂の普段の臨床では、胃腸の不調であれば頭皮鍼以外の方法でアプローチすることが多いのですが、今回実は頭皮鍼で初めてトライしました。翌日のご感想を伺うと、「速攻で胃もたれが取れて食欲が出ました。今日も調子いいです。」とのこと。
思いがけず、頭皮鍼の有効性を実感できたよい機会となりました。ありがとうございます。
敬愛する工藤訓正先生のお言葉、「すべては必然である」を思い出しました。

今回、このような素晴らしい会をご企画、運営してくださった、東京鍼灸勉強会の茂木さん、加藤先生、そして当日のスムーズな司会を担当してくださったSさま、ありがとうございました。

東京鍼灸勉強会では臨床力のある勉強会が続々と企画されています!(Facebookページはこちら

長文お読みくださりありがとうございます。

鍼灸祭におもう〜古きを抱き生き続けること。

  • 2016.05.15 Sunday
  • 22:07

五医聖爽やかな五月晴れの今日5/15、温和堂は毎年五月第三日曜日に湯島聖堂で開催される鍼灸祭に参りました。

鍼灸祭(はりきゅう祭)は、鍼灸治療に関わる全ての偉大なる先達への感謝と、日々の施術を支えてくれる鍼灸道具、そして道具の作り手の皆々様への感謝を、五医聖に奉納する毎年恒例の祭事で今年で36回目を数えます。

祭事への参列を前に、鍼灸祭と11/23の神農祭の年二回のみ開廟する神農廟、薬草の神様・神農を詣でました。
神農廟 銀杏木立銀杏神農廟参詣のもう一つの楽しみは、関東大震災と東京大空襲による類焼を食い止めたイチョウの木々。

銀杏の木は火事にあうと根元からの水分を幹に吸い上げて、枝葉より大量の水を噴出して自己消火をするのだそうです。
銀杏のこの習性を利用して、火事の多かった江戸の町には銀杏が多数植えられたのだそうです。

神農廟という守られた空間にあって黒焦げの幹をそのままに残された銀杏は、被災後70年のときを経て、黒焦げの幹を大事に抱くように元気に成長をつづけています。
ひこばえ 銀杏今年は根元にたくさんのヒコ生えのチビイチョウの葉が出てきていて、その愛らしくも逞しい姿に勇気を得ました。

湯島聖堂の銀杏のほかにも、戦火や震災の火から類焼を防いだという被災樹木が全国には数多く生き続けているそうです。


自然観察大学の唐沢孝一氏の書籍に詳しく紹介されています。
よみがえった黒こげのイチョウ: 命を守り震災や戦災を伝える樹木』(大日本図書, 2001年刊)
唐沢孝一氏による上毛新聞の記事 (2010年8月14日)


祭事のあとは、毎年東洋医学にまつわる特別講演と鍼灸の実技供覧があります。
今年は、猪飼祥夫先生による「漢代以前の医学資料概観」と盒饗膣先生による「積聚治療の紹介」でした。

北里大学東洋医学総合研究所の医史学研究部で長く客員研究員として古医学を研究されておられる猪飼先生。
猪飼先生の幅広いご研究内容のなかから、漢(B.C.206-A.D.220)時代以前の医学関連の出土品を紹介していただきました。
1970年代の大発見となった湖南省の馬王堆漢墓遺跡以外にも、近年都市開発がすすんできた中国各地で新たな遺跡の発掘が相次ぎ、最近では四川省、湖北省や甘粛省などでも貴重な史料が多く出土してきているそうです。
出土された骨を精査する古病理学の研究結果としてわかってきたことに、抜歯のあとがみえることから紀元前の中国の人たちにも虫歯があったこと、生体の頭蓋骨に石器で穴をあけた手術痕がみられることから当時その技術力があったことなどがあるそうです。
興味深かったのは、土器などで煮炊きをする食性が出てきた頃から、生食の多かったころと比べると胃腸の疾患は減るも、虫歯が増えてきている傾向があるのだそう。心 甲骨文字

また、殷代(紀元前17世紀頃 - 紀元前1046年)に作られた甲骨文字の象形を医学的な視点でみてみると、「心」の甲骨文字は、解剖して内部の構造を確認して初めてこの形状の象形文字となるのではなかろうか、という猪飼先生のお話。大変興味深く伺いました。

実技供覧の講師の高橋先生がご紹介下さったのは、積聚治療。
病の原因は「生命力の低下」とみて、「生命力低下の回復」を治療原則とする鍼灸療法。
ご紹介いただいた内容に接し、東洋医学は古来より、病を症状という断片的なものだけではなく、病んでいるひとの生きる力に着目した総体的な治療を行う医療体系であることを再認識することができました。

情報過多の今の時代、古くからあるもの、古くからある知識や習慣などは、ややもすると軽んじられてしまうこともあるかもしれません。古来よりあるものでいまに至りなお受け継がれている物事というのは、被災銀杏のように生きるために黒焦げになった部分を新たな部分が抱合して生き続けることを選んだものなのかもしれない、とそんなことをおもう新緑の1日でした。

日々是新たなり〜Dr.山元のYNSA臨床研修に参加して

  • 2016.04.15 Friday
  • 18:06
昨晩の熊本の地震で被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げ、皆様の平安を祈念いたします。

 
山元先生とご一緒に
4/4〜8日までの5日間、宮崎の青島と日南の病院にてYNSA(山元式新頭針療法)の臨床研修に参加して参りました。
昨年9月に次ぎ二度目の参加。毎秒毎分が学びに満ちた充実した研修となりました。

温和堂はこの五年ほど週に一度ですが、18歳〜65歳の肢体不自由の方々専用のデイサービスへ出張施術に通っています。
脳性麻痺や脳血管障害の後遺症や進行性疾患などにより他者のサポートが必要な生活を送っておられるご利用者の方々の関節拘縮、筋緊張や麻痺の緩和、身体機能維持といった健康づくりを、鍼灸と徒手を用いお手伝いしています。
ご利用者の方によっては言語での問診が困難な方もおられることもあり、診断方法に悩みを抱えていた一昨年の初夏、幸いにもYNSAに出会う機会を得ました。
YNSA入門の師は、温和堂の鍼灸学校時代に同級だったお馴染みの先生でした。
大変優秀な先生であることに加え、同級のよしみもあり気兼ねなしに詳しく学ぶことができました。

一昨年前から数えて計8回のYNSAの基礎的講座を受講し、自身の臨床においても日々活用して臨んだ今回の研修。
昨年の初参加時には見えなかったことが見えてきたり、自己流となっていたことが浮き彫りになったり、と技術的な気づきが多々ある研修でした。

また朝から晩までの濃密な研修の5日間を共に学んだ21名のお仲間の先生方との肩肘張らない闊達な意見交換により前向きな刺激を得ました。志を同じくする各地のお仲間と知己を得たことは大変心強い財産であります。

そして、何よりも創始者である山元敏勝先生のお人柄と、先生の臨床姿勢に直に触れられたことが研修の最大の賜物でした。
40年以上の臨床経験のなかで自らのご検証を通して見い出されたメソッドを、御歳八十を超えられてなお新たな検証を重ね必要を潔く取捨選択し、刷新し続けておられるその弛まぬ全身全霊のご研鑽の姿勢。
「みなさんも熱心にやってください。中途半端ではなく。」山元先生の姿勢に触れ、このひとことは字面以上の意味を持って響きました。

山元先生はまた、「昔は針1本で(満足な治療が)できたのですが、いまの人たちは違います。」と。情報に溢れ、時間やタスクに追われる現代の生活で、ひとのからだは様変わりしているのです。山元先生は急速に変容するひとのからだの反応をつぶさに捉え、現況に応じた療法を工夫されていらっしゃるのです。

施療しながらポソッと口から出る呟きには、いずれも患者さんの症状をよくされたい、という温かいお気持ちを感じました。
「頭がもう一つあればなぁ。」
印象にのこった山元先生のつぶやきのひとつです。ある脳神経系の疾患の方への施療中のひとことでした。

「(病にあっても) 人間のからだには修復しようとする意欲があるのです。そこに刺激を与える必要があるわけです。」

刻々と変化していく生命と真剣に相対して初めて観えてくる、普遍的な生命の理(ことわり)。患者さんお一人お一人その時々にからだに現れる差異を見つけ、症状の緩和に役立てていく。理論に振り回されることなく、生命のことわりに寄り添う、そんな臨床力の極意を垣間見ることができました。

体表に現れる変化と病の相関性を捉える山元先生を拝見していると、古代の医聖たちもこのようにして、経穴(ツボ)や経絡を見つけたのだなぁ、と感じます。
実際、YNSAの診断法でとらえた治療方針は、見脈や四診を通した東洋医学の診立てと合致することが多いのです。

五十肩、腰痛などの運動器疾患や、中枢性の疾患に用いられることが多いYNSAですが、ホルモンバランスの失調や消化器系の不調にも著効します。

今回、私自身幸運なことに山元先生の治療を受けることができました。
数ヶ月続いていた、ホルモンバランスの変化に伴う心と腎起因の浮腫と息苦しさという症状が顕著に寛解しました。
受療後、10日を経てからだの状態が好転に向かっていることを実感しています。

研修参加からひと月くらいの間「研修マジック」というものが臨床で効く、とは参加者仲間で共通の感触です。
研修で基本に立ち帰ることや、先生の応用的な臨床から得た刺激でしょうか。
参加前と比べ、格段の症状の変化をクライアントさんに実感していただくことができ感謝の限りです。

マジックでなく、実力として定着するように修練いたします!!

山元先生、運営の方々、見学させてくださった患者さんの皆様、本当にありがとうございました。
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Yamamoto New Scalp Acupuncture(YNSA)は、医師の山元敏勝先生により1973年に考案された頭皮への刺鍼を主とする針の療法。
麻酔科医、産科医として、アメリカ、ドイツの病院でご活躍された山元医師が、故郷宮崎・日南市にて開業医として鍼麻酔での数多くの手術、中国式の頭皮針治療、良導絡などを経て辿りつかれた、体表に局在するソマトトープ(体性局在・somatotopy)への診断法と鍼治療用針を用いた治療法。
詳しくは、YNSA学会のウェブサイトをご参照ください。

  • 2016.03.11 Friday
  • 12:43
 こでまりこの数日立て続けでご縁をいただいた方の旅立ちの報せが届きました。

もうお会いすることができないことを知り、心に言い知れぬ空洞ができたとき、
その方々の印象が私のなかでお花の名前となってふっと浮かびました。

彼女たちの生きていたお姿がそれぞれお花となって、私のなかの空洞に香りと色を添えてくれました。

お会いできたこと、素敵な生き方に触れることができたことを心から感謝します。 そしていま、肉体の苦しみから解かれた魂が自由に花開いていらっしゃることをお祈りします。

そして、今日は3月11日。東日本大震災のあの日から5年の月日が過ぎました。
大切な方々の魂に手向けるお花。遺された方々の心にも色と香りが灯りますように。

合掌

黄帝内経 素問 上古天眞論篇 写経会

  • 2016.02.20 Saturday
  • 13:54
写経と低糖質薬膳食の会
温和堂はおかげさまにて本日誕生日を迎えております。
自分への贈り物として、素敵な会に参加してきました。
東洋医学のバイブル『黄帝内経』の『素問』の写経と低糖質薬膳食の会。
気流LABO





こちらの会を主催されたのは、北鎌倉の気流LABOの島田先生ご夫妻です。温和堂の卒業した鍼灸学校の大先輩の先生方でして、在学中よりご高名を伺いお会いしたいと望みつつ機会があわずおり、今日ようやく約10年越しの念願が叶いました。



上古天眞論篇
本日写経したのは『黄帝内経 素問』の巻第一の上古天眞論篇
写経をしている間、『黄帝内経』が医典として二千年以上伝承されているのは、こうやって写経をされ続けてきた幾千の東洋医学の先輩方のお陰様であることを体感することができました。

『黄帝内経』は幾度か当おんわブログにも登場している、古代中国に起源を生す医学&医術書です。鍼灸、湯液(漢方薬)、導引(体操、ストレッチ)、推拿(マッサージ)など各種伝統東洋医学が臨床において主として準拠するのが、この『黄帝内経 素問』と『黄帝内経 霊数』の二書となります。
上古天眞論は、ひとが生を享けてから第二次性徴、出産、中年、壮年を迎えやがて老衰を迎えるという一生の流れのなかで体験する身体の変化についてを詳らかにしつつ、健やかに天寿を迎えるために必要な養生について説くという篇です。
養命酒のCMでおなじみの ”女子は七の倍数、男子は八の倍数”の元ネタはこの上古天眞論です。養命酒のサイト (http://www.yomeishu.co.jp/x7x8/baisu/ )。

今日の会では、島田先生の簡潔明快な『黄帝内経』そして上古天眞論についての解説に加え、島田先生がお気に入りの上古天眞論の一節のご紹介をしていただきました。
島田先生ご推奨の一節を以下に記します。

夫上古聖人之教下也 古代の聖人の教えるところによると、
皆謂之虚邪賊風   みな以下のように説いている。
避之有時      虚邪賊風(異常気象時に吹く体調を損ねる風)を避けるように、
恬憺虚无(無)   そして心を安静で虚心であるように保つように、と。
眞氣從之      そうすると眞の気が充実してきて、
精神内守      精神は内を守るようになるので、
病安從來      病が入ってくるようなことはない。

”こころを安静で虚心に保つ。”
上古天眞論ではその状態を保つ養生、つまり四季に応じ日照時間に合わせた生活や規則正しく節度ある寝食、無理のない生活をしていれば、ひとは健康に百歳まで生きられる、と説いています。

はい。
誕生日に、敬愛する黄帝から授かった贈り物は、最近乱れがちだった寝食をみなおすという有難いメッセージでした。

そして、低糖質薬膳食は目からウロコの、のし豆腐麺と醤蛸と醤浅蜊、しめじのカルボナーラとデザートにおからと抹茶のシフォンケーキでした。

生活養生と食養生。自分の手足で自立した生活を送るための屋台骨です。

深謝深謝の一日でした。

井穴刺絡で風邪しらず

  • 2016.01.21 Thursday
  • 22:16
 三稜鍼初期の風邪気味喉のイガイガ感に、井穴刺絡の抜群の著効ある、を体感している最中です。

今日は、朝の晴天にうっかり少し薄着で往療先に出掛けてしまいました。帰りしな、日暮れとともに急落した寒気に喉がイガイガし始めました

晩にご来院頂きました方がご帰宅後、すかさずセルフ井穴刺絡。

太陰経井穴への刺絡はスーッと鼻腔までスッキリ。

刺絡は微少循環の血行疏滞を改善する、と解剖生理学的に説明します。ニ千年以上前に記された東洋医学のバイブルである、古医書『黄帝内経 霊枢』 九鍼十ニ原篇には、刺絡について「宛陳(うっちん)すれば之を除き、邪勝つときは之を虚す。(後略)」と説かれています。刺絡処置後みるみるうちにスーっと喉のいがいがが引き、全身がめぐり始めているのを感じています。自然治癒力のスイッチがONとなりました。

 

初期の風邪は、大椎(第七頚椎と第一胸椎の棘突起間。顎を下に向けた時に頸の付け根で一番出っ張る箇所) を湯たんぽやカイロなどで温めることと、井穴刺絡、梅干し茶、そして暖かくしてゆっくり休眠。
これで翌朝はスッキリです。兎にも角にも早めの養生!です。

おやすみなさいませ!

切れ味は味のうち

  • 2016.01.16 Saturday
  • 04:13
松が明けました。
本年もよろしくお願い致します。
研ぎ
新年初めの投稿は、切れのあるお話から。
今日はご縁がありまして、西荻窪の醸(かもし)カフェさんで開催された包丁の守り方と研ぎかたのワークショップ "食材がこんなに美味しく活きる、料理は先ず『切ること』から!料理包丁の在り方、研ぎ方講座” に参加してきました。
庖丁の守り方、という表現は初耳です。
伝えて下さったのは、京都は南丹の工房・食道具竹上さんの庖丁コーディネータ廣瀬康二さん。
庖丁の在り方講座包丁を単なる刃物では無く、日々の食生活に不可欠な道具として庖丁に寄り添って扱って欲しい、というメッセージを込めて次のように庖丁の「守り」について説明されました。
「普通、庖丁には"管理"という言葉が使われますよね。
朝昼晩のお料理に使う包丁に一日の終わりに"庖丁さんありがとうね"、と心を寄せ同じ目線に立って見守るように庖丁を扱っていただきたいな、と思って”守り(もり)”という言葉を使っています。」

庖丁の「守り」具体的に何をするか、というと日々のメンテナンスです。
使用中のこまめな拭きとりと使用後1日の終わりにクレンザーでしっかり磨き洗い。「洗剤で洗って落ちるのは、油よごれのみ。野菜のアクなどは研磨剤で磨き取る必要があります。この時刃だけでなく柄の部分もしっかりクレンザーで洗いあげてください。柄の部分によごれが溜まるとそこから錆びたり木が破損したりすることにつながります。」
日々の守りをしっかりしておけば、切れ味が長持ちし易くなるのだとか。それでもたまには砥石をつかって刃先を磨きあげておくと、シャープな切れ味が持続するそう。
参加者の方から簡易シャープナー(円盤状の砥石の歯車の間に庖丁の刃先を入れて前後させる道具)について質問があがったのに答えて、廣瀬さんの回答は「ステンレス製の庖丁なら使用可だと思いますが、クレンザーによる日々の守りをしていればシャープナーの必要性はあまりないでしょう。鋼の庖丁には使わないでください。刃先の鋭い形状がなくなってしまいます。」そうですよね。よく考えてみたら、庖丁は金属製。クレンザーを使えば十分簡単な研磨になるのですよね。


研いで頂いた母の和庖丁実はこのワークショップ、事前に調整していただいた庖丁をつかっての研ぎ実践という大変手間の掛かったものなのです。庖丁は日々使ううちに厚みに差がでたり柄と刃の接続が緩むなどの歪みが出るもの。そういった歪みがあると鋭い磨ぎ上がりまでに時間が掛かってしまうとのことで、事前に竹上さんの工房で叩き直しや磨きいれをしていただいていました。

温和堂は、母の遺した和庖丁を2丁調整に出しました。あべの辻調理師学校で調理師免許をとった母。温和堂の台所には何丁も鋼の和庖丁や5台ほどの砥石が遺されています。私自身はステンレス製のお気楽庖丁の使用経験のみの人なので、本格的な鋼の庖丁など畏れ多く、いままで放置してきたのです。調整していただいた母の出刃包丁、実はとても珍しいものでした。出刃包丁は片刃のものがほとんどなのですが、母の出刃は両刃のものでした。一体なぜ両刃なのか、いまとなっては知る由もないのですが。。。

竹上の庖丁講習時間のなかで幾度も、「素材を活かすためには鋼の庖丁でないと。」とおっしゃる廣瀬さんのメッセージが耳に残っています。
ステンレスというのは、”錆びない”ことを特性としてデザインされた金属のため、どうしてもスカッとした切れ味をだすことが難しいものなのだそう。
それにひきかえ鋼は、スカッと鋭利な切れ味をだすことを目的にデザインされているため、スッとシャープな切れ味が持続するのだそう。
鋼の短所である錆びは、守りや研ぎといった日々のメンテナンスで十分防ぐことができるもの。錆びない素材で切れ味を落とすよりも、切れ味を生かして錆びさせない工夫をすることで、より素材を活かした食生活を送ることができる、ということなのです。

また、廣瀬さんは和庖丁のよい点として、一生使う道具としての庖丁がしっくりと手になじむように作られていることをご紹介されました。
柔らかな朴の木を柄の素材にすることで使ううちに手の形に合うように変化するのだそうです。そして柄と刃の接続部には水に強い水牛の角が使われているのだそうです。昔の日本の奥深い知恵の片鱗が庖丁という道具のなかに息づいているのですね。


tomato料理の決め手は切り口と出汁である。切れ味は、和食の五味の一つと説く人もいる、と廣瀬さん。
美味しいと感じる項目には、切り口の整った美しい見た目、エッジのたった歯ごたえや舌触りといった触感、細胞が生き生きした鮮度、スッと味が馴染んだものなどが挙げられます。どれも切れ味のよい庖丁のなせる技なのです。そういえば、(個人的にはキビシイのですが)活き造りのお造りは切れ味の鋭い庖丁だからこそできる職人技なのですね。お野菜も切れ味のよい庖丁をつかうと細胞膜の傷つきが最小に抑えらえるため水が出てきたりすることも少ないのだそうです。また切れ味のよい庖丁でひいたお造りは滑らかな表面で余分なお醤油が流れ落ちるため、素材の味に丁度あった調味料づかいができ、そして切り味よく捌かれれば、食材あますところなく使え、無駄を省くことができます。

研ぎの終わった庖丁の柄の根元を指でつまんで最小の力でトマトを切る、という実験にも挑戦。研ぎ終わったばかりの鋭利な刃は、力を要さずとも庖丁そのものの重みでスッとトマトの皮を切ることができました。
本当にシャープな切り口で見目麗しく美味しいトマトでした。素材が活きていることを五感で実感することができました。

道具を大切に、素材を大切に、力を入れずに。この要点は鍼灸の道やその他いろいろな道において共通して意識する点です。

「例えば大工さん。道具に気を配ってきちんと調整をして、道具の整理整頓している人はよい仕事をされます。」

日々のメンテナンスと整理。
庖丁研ぎを学びにきたのですが、人生においても私の生業においても活かされる肝腎なことを得た三時間でした。
最後に、砥石は30分以上お水に浸水させること、砥石と刃からでる泥をつかって研磨すること、を研ぎの備忘録として残します。
ありがとうございます。

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